今日はCMATMODSのProCo RATクローン Ratifiedとその前身作 Black Plagueについてのお話。
【なぜRATクローンなの?】
RATは現行品が手に入り、しかもクローンよりも安い価格で販売されています。ではRATクローンを使う理由はなぜでしょう? 最近のProco RATといえばオペアンプ(増幅回路を集積したIC)はOP07CPやOP07DPが使われていますが、リイッシューされた’85 RAT (いわゆるWhite Faceといわれるロゴ部分が白地に黒字でRATとかかれているやつ)では LM308Nが使われているように、伝統的なRATサウンドといえば、このLM308でしょう。
写真: CamuroにてOP07CPをLM308Nに載せ変えているところ。LEDは赤色から青色に取替え済。DCジャックもセンタープラスのPINタイプからセンターマイナスの標準タイプに交換。
このLM308というオペアンプは生産終了しているので、エフェクターを大量生産する場合には使用できませんが、ブティック系ブランドのように限定数を生産しているところではLM308を使ったディストーションを作っています。
伝統的RATの歪みを得たい方は、
(1)RATの中古(LM308を使ったもの)やリイッシュー品を買う
(2)RATの現行品をモディファイする
(3)RATクローンを買う という方法があります。
(1)の方法ですが、このようなRATは何かしらの理由で使いたくない場合があります。
例えば、中古でも高価、貴重なので持ち出したくない・改造したくない、動作が不安定、LEDが付いていない(古いモデルにはエフェクトONを示すインディケーターがありません)、トゥルーバイパスではない、などの理由です。
リイッシュー品も限定品で改造するのはためらわれます。そこで(2)の現行品RATモディファイや(3)のRATクローンという選択肢になります。
RATのサウンドバリエーションを得るために歪ませ方を変えるためクリッピングスイッチを増設するモディファイや、動作電圧を9Vから18Vに昇圧してヘッドルームを得るようにする改造も行われています。ブティック系のペダルではこうしたモディファイを標準仕様としているものがあります。またRATのフィルターノブを通常のトーンと同じ操作性(左に回すと低域、右に回すと高域)に合わせているものもあります。
写真: Proco RAT2 モディファイ by Camuro
RATベースにモディファイをするかRATクローンを使うかは、ユーザの志向によります。現行RATをベースにモディファイしたものか、ビルダーによるハンドメイド品のRATクローンか、どちらがより自分の求めるものに近いかを選択することになります。
【RATクローン】
RATのクローンといえば、FreakshowのBrown RabbitやCMATMODSのRatifiedが思いつきます。Camuroでも製作依頼を受けて何台も作ってきました。 Mad PrefessorのMighty RedもRAT系ですが、これはクローンというよりインスパイヤー系で、良い意味で全く別物になってます。
MAD Professor / Mighty Red Distortion 【送料無料】【smtb-u】【エフェクター】【マッドプロ… 価格:42,000円(税込、送料込) |
FreakshowのBrown Rabbitは一時期日本に入ってきていませんでしたが、2012年からThe Rabbitという名前で再販売されています。
独自のユニークで便利なトーンキャラクターFreakshow Effects THE RABBIT ディストーション / … 価格:21,670円(税込、送料込) |
The Rabbitの詳しい情報は持ち合わせていませんので、当店で取扱いのあるCMAT MODSのRatifiedについて詳しく見ていきたいと思います。
【CMATMODSのRATクローン】
CMATMODSではRatifiedという名前でRATクローンを生産しています。 Ratifiedの出荷は2011年夏頃からですが、実はそれ以前にはBlack Plagueと名前で発売されていました。
CMATMODS Ratified(現行生産モデル)正規輸入品 18,900円 – ブティック系ペダル専門店サウンドアルファ
CMATMODS Black Plague(生産中止モデル)
これは僕の推測でCMATMODSのChad Matthews氏に確かめたわけではないのですが、CMATMODSがPCBデザインの見直しをした時期にこのBlack Plagueの名称とケースデザインも一緒に変更しようと決めたのだと思います。
実はアメリカではBlack Plagueの音への評価は高かったのですが、この外観デザインと名前が苦手な人も多かったのです。
アメリカのエフェクターについて語りあるフォーラムでも時折話題になっていました。
例えば、Black Plagueとは「黒死病(ペスト)」という意味です。ペストはもともとクマネズミ(英語で rat )に流行る病気で、それをノミが介在して人間に流行ったものです。なのでRATのイメージからBlack Plagueという名前を付けたのではと思いますが、これをクール(かっこいい)と思うか怖いと思うかは人により変わります。
ケースのデザインも黒と赤です。 またノブもDeath、Cry、Screamとなっています。(Deathはゲイン、Cryはフィルター/トーン、Screamはボリュームをコントロール)
そして、2011年中頃から出荷されているRatifiedですが、デザインおよびネーミングが一新され、コントロールノブも恐ろしくない一般的な表現になっています。
Level: ボリューム調整ノブ。右に回すほど音量が大きくなる
Gain: ゲイン調整ノブ。右に回すほど歪み量が大きくなる
Filter: トーン調整ノブ。右に回すほど低域が増え、高域が減る(通常のトーンノブと逆)
そしてクリッピングスイッチの位置も入力側から出力側に変更になっています。
また耐圧使用が18Vになっています。
これは歪み量が減ってもヘッドルームを確保したいプレイヤーには嬉しい対応ですね。
クリッピングスイッチですが、これについて本体に付属される説明書にも詳しいことは書かれていません。これがクリッピングスイッチだとも書かれておらず、「歪み方を変えるスイッチ。上中下と3つのポジションがある。自分にあった音を見つけてください」とだけ書いてあります。
Ratifiedというネーミングですが、これはRATified(ラット化した)という造語(というかダジャレ?)です。 Ratfiedというのはratifyの過去形で、協定や条約を批准する・承認するという意味です。ひょっとしてユーザからの声を受け入れたデザインを変えたことも暗示しているのかもしれません。
このRatified、取説にクリッピングスイッチの設定について細かいことが書かれていないと上述しましたが、セッティング例を示さないのもCMATMODSのビルダー Chad Matthew氏のポリシーです。「僕が設定を推奨すると、プレイヤーはその設定にしたままにしてしまう。僕はプレイヤーにじっくりエフェクターの使い方を試してもらいたい。使っている楽器、アンプ、機材によってスイートスポットが違う。新しいトーンを見つけるのもペダルの楽しみだ。」ということを言っています。
僕も沢山のペダルを持っていますが、ペダルを沢山持てばもつほど、ひとつの機材を向き合う時間が少なくなり密度が低くなります。これは自分の戒めとして、ひとつひとつのペダルとじっくり向かい合って行きたいと思います。